の対応(消防署、病院の聞き取り、診断書等を含む)、(3)事故前の本人の状況、(4)入学以後の本人の状況、(5)合宿全般の練習内容、(6)安全対策の検証、(7)コーチおよび部員への聞き取り、(8)提言が記されている。提言には、①合宿場所の選定②合宿でのドクターの体制③指導者の安全に対する意識④コーチングの方法⑤選手の健康の自己管理⑥トレーニングおよびサプリメントについての問題点の指摘と改善の要請が記された。 突然の悲劇に遭い、指導者、部員、保護者、OB/OGの間でさまざまな感情が渦巻いた。特に部員一人ひとりの心は千々に乱れた。リーダー・仲間を喪った悲しみ、事故を防げなかった指導者への怒り、自らが何もできなかったことへの後悔、練習・試合ができなくなることへの不安、日本一の目標が遠ざかる焦り、哀しみを実感できない自分を責める気持ち…。 そのような中、事件・事故の被害者の心理的ケア(臨床心理)を専門とする池埜聡社会学部教授(現部長、現人間福祉学部教授)から多くの適切な助言をいただいた。部員の心理的なケアや我々自身に起きるであろう状況や感情の変化などについて科学的な説明を受け、茫然としていた我々に歩むべき方向、取るべき方法を示唆していただいた。 部は8月31日、ご遺族の了解を得て練習を再開した。鳥内秀晃監督と堀口直親守備コーディネーターは自身の希望により、9月28日に関西学院で開かれる追悼礼拝まで、ご遺族とともに喪に服した。 事故が起きる前まで、重篤な事故が起きないように頭部・頸部の外傷と熱中症を中心に安全対策を行ってきており、そのことについて自信をもっていた。しかし、それは過信でしかなかった。 部はこの後、「安全に、強く」を標語として掲げ、安全を最優先することを誓った。安全に関するさまざまなルールを定めるとともに、「安全対策講習会」を部員全員が参加する形で毎春、開催している。 鳥内監督はその後、ずっと毎月の月命日に平郡家を訪れて焼香し、ご両親にチームの状況を報告し続けてきた。 第3フィールドの入口には、平郡君を追悼するヤマモモの木が植樹され、部員たちの活動をずっと見守ってくれている。翌年の夏合宿からは、以下のプレートが常にグラウンド横に置かれ、学生は必ず読んで一礼してからフィールドに入る決まりとなっている。平郡さん、勇気を与えてください。僕らが高き頂に挑むことに。平郡さん、励ましてください。僕らが踏み出す一歩一歩を。平郡さん、叱咤してください。逃げ出そうとする僕らの心の弱さを。平郡さん、怒ってください。力を尽くさない僕らの怠惰を。平郡さん、僕らは誓います。「今」その一瞬一瞬に集中することを。いかなる時も前だけを見て闘い続けることを。そして、平郡さんとともに約束した頂に立つことを。平郡さん、僕らを見守っていてください。2004年8月9日平郡雷太、ファイターズとともに関西学院大学体育会アメリカンフットボール部49渦巻く感情への対応「安全に、強く」を掲げて
元のページ ../index.html#49