5年生を対象に授業を実施した。実施前にはそれぞれの学校の担当の先生方とマネージャーが実施内容を相談・決定し、授業では毎時限10数人の部員たちが子供たちと一緒にフラッグフットボールに取り組んでいる。 前述の活動に加えて、2007年には新しい取り組みを始める。小学生を対象としたフットボールスクール「上ケ原ブルーナイツ」と中高年を対象としたタッチフットボールクラブ「シニアファイターズ(S☆FIGHTERS)」の立ち上げである。 90年代後半から、欧州の地域スポーツクラブの仕組みを参考にした総合型地域スポーツクラブが日本でも少しずつ立ち上がっていた。高齢者から子供までがいろいろな競技をレベルに合わせて楽しむクラブである。 ファイターズでは2002-05年に4年連続で甲子園ボウル出場を阻まれた苦しい時代に、新たに掲げた「ファイターズにおけるトリプルミッション」のもとにチームの社会的価値の向上に取り組もうとしていた。そして、時を同じくして新しい練習拠点である第3フィールドが誕生する。初めて使用した選手たちが天然芝に近い人工芝のフィールドで気持ちよさそうに練習している姿を見て、一気に2つの構想がコーチ・ディレクター陣の中で立ち上がった。 第3フィールド誕生とともに「このフィールドで小学生がフットボールをする機会をつくりたい」という純粋な思いがチーム内に湧き上がる。大阪のチームでコーチをしていた岡本浩治OB(1979卒)に相談し、岡本と数名のOB、アシスタントディレクターの石割淳、そして現役の4年生マネージャー2名が中心となって、小学生を対象としたフットボールチーム「上ケ原ブルーナイツ」を2007年7月に設立する。 ヘッドコーチに就いた岡本は、子供たちが楕円のボールに触れフットボールを「知って」「楽しんで」「好きになって」もらい、勝つことだけを目標とせず「楽しいスポーツ」であることを体感してもらうこと、そして一人でも多くフットボールファンとフットボール人口を増やすこと、をチームの理念とした。 小学生たちは設立当初より50名以上が参加し、チームを巣立った後も多くの人たちが各学校、チームでフットボールを続けてくれている。2021年シーズンにはブルーナイツ出身者である前田公昭(2022年卒)がチャック・ミルズ杯を受賞した。 同じく2007年には「シニアファイターズ(S☆FIGHTERS)」が立ち上がる。小野宏コーチ(当時)とともに発起人となり、現在も代表を務める三浦智OB(1986年卒)は、その起点は第3フィールド移転直前に「ありがとう上ケ原グラウンド」と題して土のグラウンドで開催された、OB有志たちによるタッチフットボールゲームだったのではないか、と述懐する(OB会報「Fight On」2007年9月発行号)。 2007年7月に8人でスタートしたシニアファイターズは、その後神戸新聞が「フットボール未経験者も歓迎」と記事にしてくれたことで、多くの人たちが集まってきた。中にはライバル校のファンや女性も参加し、年齢層も30~60歳代まで幅広い構成で、様々な人たちが「好きなこと」によってつながり、損得勘定なく付き合えるコミュニティができあがった。毎年150名ほどが登録し、毎回の練習には60-70名が参加している。初期には福岡、鳥取、名古屋から通う人もいた。 フィールドでフットボールに興じて汗を流した参加者有志は、終了後には近隣の飲食店で反省会と称してビールを飲みながら交流を深めており、まさに欧州のスポーツクラブのような文化が生まれた。そして、東京遠征でのおじさんチームとの交流や福岡遠征、東鉢伏高原での合宿(1泊)などへと活動は広がっている。 毎週日曜日の午前の第3フィールドは、上ヶ原ブルーナイツの小学生たちと、シニアファイターズの中高年たちが駆け回り、そこに時折中学部ファイターズやフラッグフットボール大会「ハドルボウル」に参加するOB/OGたちが練習をしている。まさにフットボールの“Field of Dreams”と言える光景が広がっている。53「上ヶ原版Field of Dreams」~上ケ原ブルーナイツとシニアファイターズ~
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