図3図4 立命守備の特徴は、ランストップへ重点を置いてセイフティをランサポートに参加させる新たなCover4の概念を導入しつつ、その弱点であるアンダーゾーンのパスを簡単に通させないためのマッチアップゾーン(ゾーンとマンの中間のようなカバレッジ)を組み合わせた点にあった(図3)。さらに守備ラインは高い頻度でスタンツ(ET,Tony,Nauti,TEX等)をかけるなど特別な取り組みを早いダウンで用いてランを封じ込め、第3ダウンのロングシチュエーションに持ち込んで、6人DBを投入したDime守備に移行してパスを防ぐというスキームが極めて有効に機能していた。 我々は敗戦のたびに自問自答を繰り返していた。いったい我々の強みは何か。我々は何を軸にして戦うべきなのか。その模索の中でたどり着いたのが、ハワイ大学によるパスに特化した「ラン&シュート」と呼ばれるオフェンスだった。一人ひとりのレシーバーが守備バックの位置や下がり具合を見ながらルールに基づいてコースをさまざまに自動的に変化させ、守備がどのようなカバレッジを敷いてもそれに合わせて最も適したパスパターンに全体が変化していくという夢のパッシングゲームである(図4)。関学も1990年導入し、勝ち切れずに継続を断念していた。当時はダイレクトスナップだったが、ショットガンに切り替えての再挑戦となった。この戦術の元祖であるジュン・ジョーンズ氏が率いるハワイ大が平成ボウルで来日したことや、大村現監督が当時、ハワイ大にフットボール留学していたこともあり、QBコーチのダン・モリソン氏を定期的に招聘して特殊なノウハウを蓄積していった。 そして2006年、QB三原の成長とともにパスオフェンスはレベルを格段に上げ、立命を16-14で破り、5年ぶりの甲子園ボウル出場を果たした。翌2007年も立命を31-28で制し、甲子園球場が改修中のため長居陸上競技場で開催された甲子園ボウルで、20年ぶりに出場してきた日大との激しい“打ち合い”を制し、41-38で6年ぶりの勝利を果たした。そしてライスボウルでは、松下電工(現パナソニック)に敗れたものの、Xリーグで圧倒的だった鉄壁守備からパスで564ヤードを奪った(ライスボウルのパス獲得ヤードの新記録)。このパスオフェンスは関学史上最も高いレベルにあったと確信している。 2009年には大村現監督がコーチとして我々の攻撃に加わる。そして、王者をめざして安定的なオフェンスを築くために、ランとパスを組み合わせるバランスアタックへの回帰を決めた。ただし、当時のメンバーはR&S4年目の選手たちで構成されており、パスオフェンスのために特化した練習を積んできていた。このため、OLはランブロックの、RBはパワープレーの走りを改めて習得する必要があった。何とかレベルアップをして新たな攻撃の軸の確立に取り組んだのだが、2009年には関大に、2010年は立命に敗れた。67立命館大のC-4的なマッチアップゾーンラン&シュートの一番基本的なパスパターン「Vertical」VS.Cover-2の場合ラン&シュートの一番基本的なパスパターン「Vertical」VS.Cover-3の場合
元のページ ../index.html#67