関西学院大学アメリカンフットボール部|創部80周年記念誌
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フェンスのブロックに劇的な変化をもたらしたと思う。すなわち、「1対1で押す力」よりも「ある地点において一定時間だけ密着している力」が重要になり、あとは押し戻されない程度の重さ、大きさを備えたブロッカーがいればOKとの印象を持たされた。それはパスプロテクションにおいても有効で、押す力よりもポジショニングの理解度が問われているように見えた。 それに対するに、とにかく速く当たれて速く動けるDLineが必要になった。カバレッジの多様化への着手が遅れてしまった要因がここにある。どうしても、プレーアクションパスに対抗し得るディフェンスが明確に描けず、どこか無難な守り方に終始した感が否めない。この時代の経験は、力がある時に冒険するのは容易いが、厳しい時にこそ思い切ってトライすべきだという教訓となり、未だに活かされている。 2000年代後半に入ると、“Wildcat”と“Empty”という両極端なオフェンスが多くの大学で取り入れられるようになる。もとよりそういう攻め手があると知り、事前に準備しておく必要がある。90年代の記載にある“Auto”という、LOSコールを強制的に行わせる方策は、このワイルドキャット対策にも活かされることになる。 とにかく今のオフェンスはパーソネル、フォーメーション、アライメントなどが多岐に亘り、傾向の把握も困難。個々の隊形からは予想しやすくなったと言っても、指示されたディフェンスのままでは対処しきれないことが多い。ディフェンス全体としてはそのままで対応可能だとしても、予測されるブロックやボールの軌道により個人的に厳しくなる場合もある。そんな時には、個人的に微調整すれば良い。それは同時に間違うリスクも高めることになる。どれだけフットボールが変化しても、永遠に問われ続けるのは、セカンダリーのタックル力に他ならない。 こういうものを書くと、主語が常に一人称になりがちです。しかし、相手を知り、悩み、考え抜いて、アイデアを出し合い、試して、失敗して、時に激しく議論もして、また考え直して、試して、やっとの思いでたった一つのプレーコールを創り上げる過程には、監督やコーチたちはもちろん、4年生、 すべての現役部員の意見や取組があったことは言うまでもありません。まさに総力の結集であることを、ここに改めて書き記しておきます。感謝を込めて。69やはり大事な「自由な発想」あとがき

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