2010年代も、ショットガン隊形からの攻撃のバリエーションはさらに増し、これに対抗するための方策の開発が進んだ。特に、2013年にブリッツの多用を含めたプレッシャーディフェンスへ転換したことが功を奏する結果となり、これが起点となってディフェンスから仕掛ける戦術を用いる頻度が高まることとなった。 2009年以降から2010年代序盤にかけて、走力に長けた人材をQBに起用し、ショットガン隊形からRBのランと見せかけてQBがインサイドからオフタックル辺りを狙うプレーが多用された。パスもあるWild Catといった印象で、常にQBのランを意識して守らねばならず、一定の人員をパスに割きながら、RBとQBそれぞれに人を割り当てる等の対策をとったが、当時は戦術面で変化に乏しかったことや、プレーヤーの目が慣れていなかったことで後手に回ることが多かった。また、RBへのSwingやWRへのスクリーンといったフィールドを広く使ったプレー、WRに位置したプレーヤーが高速でモーション(ジェットモーション)し、そのままQBからハンドオフを受けてオープンをまくるプレーや、そのアクションからのパスも、この頃多く用いられた。 2010年代中盤、ジェットモーションからのプレーはさらに進化し、モーションするプレーヤーにハンドオフのアクションの後、RB、さらにはQBが持つプレーへ展開するようになった。高速モーションかつ誰が最終的にボールを持つか分からない状況の中で、人数負けしないアジャストやオフェンス大寺 将史(1994年卒)人材の配置によるプレー予測が必要となり、できるだけシンプルなアジャストルールの構築に努めたものの、これまで以上にLB・DB に賢さが求められるようになった。 さまざまな隊形やMotionを用いた攻撃は、日本ではファイターズに先進性があると思われたが、他大学でもアメリカのカレッジで流行ったプレーがあれば、翌年にはそれを真似たプレーが導入されることが当たり前のようになり、これらの多様なプレーをどうやって止めるのか、オフェンスの特徴、シチュエイションやパーソネルから何を優先して止めるのか、どうすれば受け身にならず攻撃的なディフェンスができるかといったことを大いに考えさせられた。 こうして多様なランプレーの脅威が増すと、これを止めることに個々のプレーヤーの意識が強くなり、サイドラインからも読み切れず、度々プレーアクションパスによるロングゲインを許すことが起きていた。このため、プレーアクションパスで予想されるパスパターンに対するカバレッジの工夫や、ランストップを主眼におきながらも、QBにプレッシャー7430年間の戦術の変遷ディフェンス(2011-2021)ショットガン隊形からの攻撃の多様化プレーアクションパス対策16
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