関西学院大学アメリカンフットボール部|創部80周年記念誌
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測定風景ムにとどまらず、社会人のチームにおいても同様で、各チームのトレーニング指導者がネブラスカ大学の評価表の日本版を作ろうという呼びかけに快く応じてくれたことにより事がまた前に進みだした。 こうして完成した日本版フィジカル評価表(通称: パーセンタイル評価表)により体格、筋力、パワー、スピード、敏捷性など各個人のストロングポイント、ウィークポイントが明確となり、ポジションやその時々の戦術において強化が必須の体力項目を浮き彫りにすることができた。言い換えれば選手一人一人のフィジカル・フィットネスの強化ポイントが容易に判断でき、それに対する適確なトレーニングを集中して行なえるようになった。当時そのことにより飛躍的に体力面の向上につながったことが思い出される。時は21世紀になっていた。 新たな世紀になりトレーニングの世界における革新はますます加速していった。アメリカンフットボールにおけるトレーニングも例外ではなかった。 どこのトレーニングルームでも「スクワットのマックスいくらや?」、「ベンチプレスは、なんぼ挙んねん?」といった会話がよく交わされている。これは最大の挙上重量がいくらなのかを聞いているのだ。それにより筋力の優劣を評価しているのだろう。じつはそんなに単純でない事は物理を少しでも知るものなら気がつくであろう。先の会話は持ち挙げられる質量を論じ合っているだけで本来の力を正確に表しているわけではない。簡単に言えば100kgをゆっくり挙げるのと素早く挙げるのとでは大きく違うという事である。後者が優っている事は明らかである。でも前世紀までは先の例で言えば最大挙上重量は同じ100kgで筋力の評価は同一とされてきた。 それが新しい世紀となりデジタルツールの発達、発展にともないトレーニングの分野でもいろいろな事が可視化できる様になってきたのである。一番は先ほどの挙上の速度(スピード)がリアルタイムに測れる様になったという事であった。 それまで監督やコーチングスタッフからフィールドで会うと「トレーニングの成果が出ているのはわかるけれど、いざフットボールとなると全然その成果が活かされていないんだよな」とよくこんな事を言われて苦虫を噛みつぶしたものである。確かに目の前のフィールド上では選手は全ての動きで速度を無意識に高めようとしていた。なのにトレーニングルームでは速度を意識するのではなく、相も変わらず質量だけと格闘する。それでは指導者から嘆きの一言が出ても仕方がない事であろう。そこに先ほどのデジタルツールが出現したのである。前項でお話しした評価表で各トレーニング種目の挙上重量(質量)の目標がクリアできた選手からこのツールを使い、挙上速度を計測しフィールドと同じくトレーニングルームでも速さという新しい目標・変数にこだわってトレーニングをこころみた。まさにそこにトレーニングルームとフィールドをつなぐ大きな気づきがあった。同じ挙上重量であったとしても速度には優劣があり、ほぼほぼフィールド上での評価と合致した。ファイターズのトレーニングがまた一歩前進した瞬間であったと確信している。また、このような決して安価ではないツールへ早くから理解をしめし、準備をしていただけるというチームがもつ伝統もトレーニングの成果を後押ししたと言える。81新たなトレーニング目標・変数の出現(見えなかったことが見えることに)

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