関西学院大学アメリカンフットボール部|創部80周年記念誌
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千刈キャンプ 先のツール出現以降、世の中のデジタル隆盛の影響を受けフィジカルトレーニングにおいても多くのデジタルトレーニングツールやガジェットが簡単に手に入る事となった。選手も幼少期からパソコンやゲーム機に親しんでいる事もあり、それらの新しい風をすぐに受け入れ自分のものとしてくれた。ただその裏で社会問題にもなっているゲーム機や特定のスポーツ種目を子どもの頃から極端に行なってきている弊害がファイターズの選手にも顕著に見られ始めた。2010年代に入ってからであろう。 一昔前の選手であれば子どもの頃は屋外で遊ぶことが遊びの王道であった。そこには危険も潜む変わりに自分の身体を自在に操る技術を手に入れる刺激が多く存在した。今の選手は、確かに前述してきた体格や筋力、パワー、スピード等どれをとっても四半世紀前とは革命といっても過言ではないほどに大きく向上が見られるが、それらのフィジカル能向上をフットボールのテクニックへ効率よく転化できているかが疑問になったのがこの時期であった。全てお膳立てされた動きはそつなくこなすが、予想だにしない課題を突き付けられた時には凍りついたかのように動作が停まる。この事を解消するためのトレーニングプログラムに着手することが急務となった。 GO WILD!! このかけ声とともに大学のもつ千刈キャンプ場で一見理不尽に思えるが全て根拠のあるトレーニング内容を準備して合宿を敢行することとなった。いつもは人工芝で練習を行なっているためトレーニングウエアが汚れる事はほとんどないが、この合宿では選手は足下の悪い森林を走り、重い薪を担いで運んだりと毎回のトレーニングで選手は泥人形のようになった。本来内に潜んでいる各自の野生的運動能力の発現をねらった。いつもの整備されたトレーニングルームとは違う不便な環境でいかに自分の身体を制御し、効率よく与えられた課題を達成するかを身体で感じるといったプログラムである。 このキャンプの主たる目的である自分の身体をいかに制御するかというプログラムは、前述したデジタルツール等を最大限駆使した効率性に重きをおいたトレーニングプログラムとあいまってすばらしい効果を発揮したのではと昨今の戦績から感じる次第である。 ここまで取り組んできた内容を中心に話しをすすめてきたが、四半世紀このチームにおけるトレーニングのサポートにたずさわって確信が持てることがある。トレーニングにおいて何を行なうかも非常に重要ではあるが、それ以上にいかにその時々のトレーニングに取り組むのかがトレーニングの成果を左右させてきたと感じる。そのことでは、そのトレーニングのミッションを選手たちにやりきらせようとした各時代の学生トレーナーそしてそれを見事にやりきった各選手がファイターズのトレーニングの歴史を築いたといえるであろう。 最後にファイターズのトレーニングは、先行く者の残した実績が次の世代を照らす明かりとなり、今も日々進歩していることを書き記しておきたい。82いかに自身の身体を制御するか最後に

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